ご立派ア!!!
見た目はそこそこ良い感じ、と話題になりやすい中国製コピーギターですね。
見ての通りのストランドバーグのパクリで、界隈では『チャイナバーグ』『中華バーグ』等と呼ばれる部類のお品。
これに限らず数多く存在するチャイナバーグ・・・。
そのどれもが激安で品質も値段相応な印象ですが、僅かな希望を抱きながら地雷を踏み抜く覚悟で買うのが一種の様式美な気がします。笑
ちなみにこの場合の中華ギターとは、「大手メーカーがコスト削減で作るアジア産の廉価モデル」ではなく、
《勝手にコピー品を作りまくる完全な中国展開のパチモノ》を指します。グレーとかじゃなく完全アウト。
しかし、このアンダーグラウンドなシーンにちょっと異彩を放つものが登場しました。
それがこのEARTというメーカーです。読みはイアート?でいいんですかね? アートの方が発音的には近そうです。
調べると結構前から存在していたようです。ふとアマゾンに表示されたのをキッカケに知りました。
お値段なんと約35000円。(激安つっても35000円は35000円ですけどね・・・(真理)
ヘッドレスのラインナップはトレモロ搭載の''W1''と、ノントレモロの''W2''で、僕が購入したものは"W2"です。
主なスペックは以下の通り。
・ネック : 5-piece Maple&Redwood
・指板:Indian Rosewood、9.5-14R(コンパウンドラディアス)
・ボディ:African Redwood
・フレット:Steinless Steel 24frets
・ピックアップ:Class57 x2(メーカーオリジナル)
ざっとこんな感じ。
まずはこのフレットをご覧ください。
仕上げが良すぎる。
フレットエッジは全て綺麗に丸められており、一切の引っかかりや違和感がありません。
10万前後のクラスのギターでもこれより仕上げの甘いものはあります。
しかもこれステンレスフレットなんですよね・・・。中国の人件費とかコストどうなってんだ。
このフレットの仕上げについてはメーカーが強く推してるようで、ここのギターは全てこんな感じみたいです。
安いギターの大半がフレット周りは雑で、中には痛いくらい引っかかるものもありますが、そこを完璧に克服してますね。
届くまでは半信半疑でしたが、嘘偽りなくちゃんとした仕上がりです。素直に凄い。
全日本フレットサイドの仕上がり品評会会長の僕ですが、これにはニッコリですね。
ボディバック。レッドウッドだそうです。塗装もまずまずの仕上がりです。色味や質感に安っぽさは感じますが、ダメな程ではないです。
トップ材はバールメイプル風ですが、トップの記載が無いので実際のところはノントップっぽいです。
おそらく、レッドウッドの表面にバールっぽい凹みや穴をつけたりした上で着色だか薄いシートだかを貼って仕上げてるんだと思います。
これに限らず安価なギターのキルトトップが偽物な事ありますが、あの類かと。
近くで見れば見るほど嘘くさい感じですが、遠目には立派な雰囲気はあります。
バック塗装の赤みがトップにも僅かに飛散してますが、まあそこは気にしたら負けでしょう。
お次はアウトプットジャック。
ちゃんと本家バーグと同じ作りになってますね。ここは特に問題ありませんが、採用されている部品は安いでしょう。
ヘッド側。ボールエンドがこっちに来るタイプですね。スタインバーガーのようなダブルボールエンドではなく、一般的な弦を使用します。
ちなみに0フレット仕様です。
ここから弦の先端をブリッジ側に通して巻いて固定していくのですが・・・
ちょっとブリッジが特殊な仕様なので、それは次回に書こうと思います。
(説明書や情報が無かったので、構造を把握するのに少し手間取りました)
チューニング精度はまずまずといったところです。
ネック。
バーグと言えば、特徴的な台形型ネックですが、これは普通にCスリム系のシェイプでした。
太すぎず、薄すぎずのバランスでしょうか。サテン仕上げでスムースな触り心地です。
ネックのセンター位置もバッチリで、指板の両端のクリアランスも偏りなく確保されています。
材の品質面に関しても捻れや波打ち等なく、ほぼほぼストレートな状態で届きました。
ピックアップはEART製の''Class57''というハムバッカーが二基。
名前からしてギブソンの'57Classicを意識してるかと思いましたが、Q&A見るとそんな事もなさそう。ミスリード狙いかな?
音に関しては、やはり安ギターのそれという感じでレンジは狭く、ルーズでローファイな印象です。
このままでも普通に使えますが、良いものではないですね。更にギター自体のシェイプも相まってか全体的に軽い音です。
ただフロント側でジャズっぽいものを弾く際には案外良い作用をします。
ピックアップセレクターは3wayです。
最後にキャビティ内。
シールディングはされてませんが、特に気になるようなノイズはありませんでした。
接触不良や断線もありません。
だいたいこんな感じでしょうか。
値段を考えるとフレットをはじめとする仕上がりの良さに驚きます。海外のレビューを見ても概ね高評価なようです。
で、一番肝心な楽器としての演奏性ですが・・・
これに関しては今一歩なところがあります。
絶望的なバズだとか、指板上の弦の位置がおかしいとか、ネックが曲がってるとかは無く、ちゃんときっちり作られてるのですが、
どうにもローポジションからハイポジションにかけての弦高のギャップが気になります。
デフォルトの状態でも弾けるレベルなのですが、このタイプのギターを求める人達はローアクションを好むと思うんですよね。
低めに弦高調整してもハイポジション側のギャップがあまり埋まらず、やり過ぎるとローポジション側でビビリが出てきます。
おそらくネックの仕込み角度とかそういう設計上の問題な気がします。
全体的な仕上がりの良さを見るに設計通り作るという事はこなしている印象なので、
根本的な部分を見直せばかなり良いギターになると感じました。
実際、ロー〜ミドルポジション側はかなり快適です。
本当に安いギターって設計とは関係なく、工程側で雑な作業されてる感じがあるのですが、このギターにはそういういい加減な要素は殆ど見受けられませんでした。
この点は大きな違いかなーと。
なんだか応援したい気持ちがありますね。笑
そう言えば重量に関しては本家のような超軽量ではありません。
ヘッドが無い分の取り回しの良さはありますが、並みの重さはあります。
シェイプに関しても、微妙に本家と違うようです。ボディエンドが顕著ですが、それ以外にも寸法が違ってそうです。
あと、なぜノントレモロを選んだかという事にも触れておきます。
まあ、これは安全策というか、この手のヘッドレスのブリッジってケチったコストがモロに影響する印象あるんですよね。笑
だからトレモロのような可動式の機構には不安要素あった感じです。
本音言えばトレモロあった方が嬉しいですけどね。値段も同じですし。
結果的には、
価格に対しての出来の良さはありますが、実用上惜しい点もある。
という感じでした。
メインギターとしては厳しいですが、ヘッドレスを試したいとかバーグのコピー欲しいという場合の選択肢としては十分です。
とは言えこれが10万とか払って届いたらガッカリしますけどね。笑
あとはネック周りの改造次第で化けそうな気もします。
次回は、弦交換のタイミングでブリッジ周りについて書きたいと思います。
【追記】ブリッジの記事書きました。