セッションプレイヤーとしても活動する他、MI講師としても知られる、Ross Boltonによるファンク・カッティング教則の紹介です。
Ross Boltonはカッティングの名手としても知られており、自然と馴染むようにバックに徹したものからアグレッシブなスタイルまでグルーヴィーにキメてくれます。
Ross Bolton本人によるかなりアグレッシブな例。
そんな彼がリリースしたこの教則はカッティングの基礎を固めるのに必要な要素を無理なく一冊にまとめています。
というのは、最初から最後まで一貫してアクセントや符割、リズムパターン、基本フォームに徹底した内容なのです。
僕もそうだったのですが、カッティングに疎いたいていの人は、いわゆる「技巧派カッティング」を見た時、とても複雑なコードチェンジを凝ったリズムパターンで弾きまくるものを想像すると同時に、どうしてもそういう演奏に拘りがちになると思うのですが、この教則は良い意味でそれらの先入観を取っ払ってくれます。
この本には譜例と連動した付属CDにロス本人のデモが収録されていまして、それらはとてもシンプルながらもかっこよく、且つアンサンブルの邪魔にならない基本のパターンをセンス良く演奏して紹介してくれるので、「なんだ、これくらいでも良かったのか」と僕は感銘を受けました。
不必要にポジションを動きまくるワケでもなく、コードチェンジしまくるワケでもなく、オブリで手数を詰め込むワケでもなく、本当にワンコードもしくはツーコードでの実践的なリズムパターンやコードヴォシングの解説、単音系カッティングのアクセント例、そして効果的に音を動かす例に重点を置いてくれています。
内容としては最初に述べた通り、本当に基礎的なものなので、もう既にカッティングを巧みに演奏できる人には退屈かも知れませんが、僕のようにメタルばかり弾いていた人間にはとても興味深い本でした。
全般的に初歩を扱った教則といえばどうしても弾く意欲に欠ける内容だったりしますが、この本はその初歩らしさとプレイヤー志向な部分のバランスが非常にうまくミックスされてると思います。
アーティスト固有のフレーズばかりの偏った内容だと、クセが強いうえに応用も効かせにくいですが、この本はそのまま自分の引き出しとして使っても違和感無いフレーズが殆どでした。
なによりRoss Boltonの演奏がかっこいいので説得力ある仕上がりですね。初歩とは書きましたが、本の終盤には少しレベルアップして、これまでの応用を活かした複合リックなんかも少し載ってます。
ちなみに洋書なので英語が得意な人はより楽しめると思います。