一言にトリオの音源と言ってもその中でジャンルや形態も色々存在しますが、今回はギター/ベース/ドラム編成でのロックフュージョン的なアプローチのものを中心に、僕が愛聴する事の多い音源をご紹介します。(順不同)
どれも技術特化な傾向で一般的にはマニアックではありますが、ギターオタク的にはそれなりに知られてるものかもしれません。
では・・・
1. Mojo / Tapestry
Brett Garsed(Gt), Ric Fierabracci(Ba), Kofi Baker(Drs)
ギターのブレットとベースのリックはこれまでも何度か共演していましたが、ドラムのコフィの参加はこの音源ならではかと思います。(ちなみにコフィはあのジンジャー・ベイカーの息子だそうで)
楽曲は一貫してロックフィールなセッションというイメージのもので、サウンドバリエーションとしてはあまり幅広くは無いですが、逆に言えば最後までブレずに安定して楽しめます。
その反面、分かりやすくキラーチューンと呼べる曲も無いですが、どれも渋好みで中毒性の高い、やや尖った個性を持っています。
A4もしくはA3の五線紙一枚に書いて渡せそうなセッション曲という感じで、その中で各々の技巧やアンサンブルを披露してる印象ですね。
この手のトリオに大事なリフでのリズムの凝りかたや、シンプルながらもどこか捻くれた面白さやフックはしっかりあるので、硬派なロックフュージョントリオが好きな方にはオススメです。
特に僕はブレットの大ファンなので、こういった曲調でのフレーズは参考にしやすく、そういう意味でも重宝してます。笑
録音としてはかなりライブ感のある活きたサウンドですが、控えめながらも要所要所でオーバーダブはあり、あくまでスタジオ盤といった感じでしょうか。
間違いなくロック傾向ですが、それほどハードな感じでは無いので気軽に聴けます。
地味といえば地味ですが、奥行きのあるスルメ的アルバムです。
ジャケ絵が意味不明ですがなんか能力者が誰かを爆殺してる感じがいいですね。笑
2. Shawn Lane,Jonas Hellborg,Jeff Sipe / Personae
Shawn Lane(Gt), Jonas Hellborg(Ba), Jeff Sipe(Drs)
怪物ショーン・レインがソロ作以降に活動を共にしていたトリオでのライブ音源です。
ショーンとジョナスはデビュー初期からの付き合いで、この他にもインド音楽に傾倒していた時期にも共演しています。
演奏曲はショーンが参加したMichael Shrieve(Drs)の作品のものや、ジョナスのソロアルバムから選曲されています。
メンツがメンツなだけに、これでもかと言わんばかりの音のバトルが繰り広げられており、商業的な面を完全に置き去りにしているであろう鬼気迫る内容はオタクの極みと言えます。(僕はこのCDを人に話すときは、''地下闘技場''って言ってます)
録音も臨場感と迫力があり、演奏の勢いと凄まじさに圧倒されます。もうなんか初っ端から「ピロピロ、バキバキ、バカスカ」やってる感じです。
曲はワンコードものが中心ですが、どこか異国感の漂うテーマ(ジョナスの持ち味?)やスケール感、アドリブの応酬、ユニゾンセクションもあったりとかなり充実しています。
ショーンのギターサウンドやアプローチは抜群のハマり具合を見せており、個人的にはこのトリオのこの楽曲で好き勝手やるのがショーンに一番合ってると感じますね。(ソロアルバムも良いんですが)
ジョナスのベースもグイグイくる押しの強さを持っており、バッキングはもちろんソロワークも見事です。ジェフのドラムも手数が必要な箇所とそうでない箇所のバランスが良く、サウンドが薄くなることはまず無いです。
ライブなので当然インプロは多くなりますが、その場面場面に応じてのメンバーのプレイが巧みなので冗長な印象は受けにくいと思います。
ちなみに似た作品として''Time is the Enemy''というライブ盤もありますが、僕的にはこの''Personae''をオススメします。
余談ですが、このCDはプレスのタイミングによっては若干の変更点があるようで、表面のクレジットが''Hellborg / Lane / Sipe''と全員表記されてるものもあれば、僕のは''Hellborg / Lane''だけだったりします。
なぜSipeだけ省かれる事があるのか分かりませんが、いずれにせよHellborgが先頭にくるという事はこのアルバムのメインはジョナスにあるのかもしれません。
ただ、このトリオのドラムはジェフの代わりに前述のMojoのコフィが参加する事もあったようです。
というのもジョナスのソロアルバム''Abstract Logic''の録音はコフィなんですね。
なので、ジョナスとショーンがいて、そこにドラムをという体制なのかもですね。
3. The Aristocrats / Culture Clash
Guthrie Govan(Gt), Bryan Beller(Ba), Marco Minnemann(Drs)
上記2枚に比べて比較的知名度は高いトリオなので紹介する旨味は少ないかもですが、やはり外せない存在ですね。
元々ギターにはグレッグ・ハウが参加する方向で話が進んでいたプロジェクトでしたが、急遽代役したガスリーがそのままメンバーに決まったそうです。
この手のトリオの傾向としてアルバム一枚で終わっちゃう事も少なくないですが、これに関しては現在4thアルバムまでリリースされており(ライブ盤やDVDも含むともっとあります)、ツアーも積極的に行なっています。
ちゃんと''長期活動のバンド''を念頭においてるそうで、楽曲もやっつけセッション感が無く、全員がしっかりとコンセプトを決めて曲を作り、持ち込んでいます。
メンツ補正で聴くトリオにありがちな「楽曲の仕上がりは雑だけど上手いからヨシ」みたいな感じでは無いですね。
作編曲については「アルバム毎に一人3曲づつ提案」というルールを設けているようです。
基本はロックですがメンバーのプレイスタイルが広い事もあり、出来る事は遠慮なくやろうという姿勢で特に一つのジャンルへのこだわりも無く、ナチュラルに全員の個性が出てる印象です。
時折「〜〜風」な曲調を見せる事もありつつ、どれもユニークな雰囲気をもってます。
大雑把に言えば、シリアスな感じよりは適度に肩の力を抜いたジョークの効いた変なロックという感じで、そこに各々の異常なまでのバカテクと音楽知識が合わさって個性的なトリオになっています。
基本的にどのアルバムもサウンドの核は同じなものの、曲の傾向や趣向に違いがあり、どれか一枚を選ぶのは難しいのですが、僕はこの2ndの''Culture Clash''を推したいです。
理由としては単純に好みの曲が多いというのが大きいですが、個人的にはこのアルバムがこのバンドの美味しい部分がよく出てるように思います。
前作1st同様に個性的なロック感は引き継ぎつつも、より曲構成にメリハリが出ており、テーマのメロディやセクションの位置も明確になった事でかなり聴きやすくなってます。
これは全体通しての収録時間が短くなり、アルバムとしてコンパクトになった事も貢献してますね。
1stの時点ではなんとなく探ってるような印象も受けましたが、今作はメンバー同士の理解が深まったのか、方向性のまとまりを感じます。
聴きやすい部分と複雑な部分のバランスが絶妙で、ユーモアのあるロックが展開されています。
技巧派集団の全力の悪ふざけ、といった雰囲気ですね。
一応前作聴いていますが、僕はこの2ndが一番ですかね。同時期のライブ盤''Culture Clash Live!''も甲乙つけ難いですが・・・。
以上になります。
正直トリオ系の音源で好きなものを挙げるとなると多すぎて3枚どころの騒ぎじゃ無いんですが、今回はテクニカルロックギターという共通項のものの中で特に愛聴してる(+ギタリスト目線でのリスペクトの高さ)としてこの3枚の事を書きました。
ロックトリオは最低限の編成でありつつもそれを感じさせないサウンドスケールや一体感が醍醐味だと思っていて、特にトラディショナルな要素も含んでいるものに惹かれるのですが、そういう意味でもジミヘンが展開していたあのイメージというかそういった土台を少なからず感じるものが好きかもですね。
あの時代と比べてエレキギターのスキルは大きく進歩しましたが、こういうトリオサウンドを出すプレイヤー達はみんなジミヘンをリスペクトしてると思いますし、表面的に出てるサウンドに違いはあろうともトリオの核みたいなところで共通してる気がします。