ここ最近、ブログ経由だったりリアルだったりでジプシーギターについて聞かれる事が増えました。
大体は「何からやったら良いですか?」とか「どこのギターがオススメですか?」といった話題です。
今回、後者についてこの場で少し情報(だいぶ主観含む)をシェアさせて頂こうと思います。
これから始めようと考えてる方々への助けになれば幸いです。
【ジプシーギターのタイプ】
まず、ジプシーギターのタイプになりますが、大まかにサウンドホールの形状の違いで3種類あります。
・やや小さめな楕円型のホールを持つ、O(オーバル)・ホール・モデル = セルマー・タイプ
・大きく口の開いたようなD型のホールを持つ、Dホール・モデル = マカフェリ・タイプ
・一般的なジャズギターのようなFホールを持つ、Fホール・モデル = ディ・マウロ・タイプ
(※ちなみに日本ではジプシーギターを一括りに「マカフェリ・ギター」と呼称しがちな傾向にありますが、厳密にはマリオ・マカフェリ設計のDモデルがマカフェリ・タイプにあたります。
どれもマリオ・マカフェリを起源とするギターなので、ある意味では正しいのですが、やや大雑把な括りではあります。おそらく特徴的な語感からくる認識のしやすさが優先された結果に思います)
一般的なのは、OとDのタイプで、基本的にはこのどちらかをお好みで選べば良いと思います。
僕が事前に得ていた情報ですと「Oはリード向け、Dはバッキング向け」とされるそうですが、両者を弾いた印象だと「別にどっちでも好きに使えばええやん」って感じです。
ただ、Dの方が音量や音の太さに秀でた傾向にはあるので、そう言う意味ではぶっちゃけアンサンブル内での安心感はリード/バッキング共にDの方が得られる気がしますが、太さは反面キレの悪さにも繋がりますので、Oの方がシャープな演奏はしやすいです。
ちなみにDはネックジョイント位置が12フレット、14フレットの二種類があり、前者はハイポジションが窮屈でやや演奏性に欠ける面もあります。そう言う意味でもバッキング向けとされるのでしょうか?(でも謎に24フレットあるんだよなあ・・・)
楽器自体の弾きやすさに関しては、両者共にメーカー毎のノウハウによるので、14フレットジョイントであればOとDでどっちが弾きやすいとかは無いですね。
見た目や音の好み、実際に触ってみてのネックグリップ等の相性で選べば大丈夫です。
【オススメのメーカーや相場】
予算にもよりますが、現在の市場価格ですと、入門機種でも新品で10万円からといったところで初心者にはそこそこハードルが高いです・・・。
ひと昔前はARIAから3〜6万円程度のモデルが出ていましたが生産終了となり、最近また再生産が始まったものの12万円クラスへと値上がりしてしまいました。
又、そういったリーズナブルなモデルの大半は中国製造のもので、作りは年々良くなってますが、音色に関して物足りない部分もあり、誤解を恐れずに言うと一般的なギターと違い「本当の意味で絶妙にコスパの良いモノがほぼほぼ無い」のが現状です。
例えば、エレキだとフジゲンのように価格に対してかなり頑張っているメーカーがあったり、アコギにしてもマイクやプリアンプが内蔵されていたりで、アジア製でも仕上がりに多少目を瞑れば機能性は充実したものは多々ありますが、ジプシーギターの場合はそこまでのものが無いです。
電装やスペック周りでお得感を出せるエレキと比較するのも酷とは思いますが、そこそこの金額出してもアジア製で、言葉を選ばず言うなら妥協になってしまいます。
それらの作りが露骨に悪いとかではなく、昨今どのメーカーもよく出来ているのですが、ジプシージャズは楽器本体の鳴りに100%依存するジャンルなので他の要素で補うことが出来ず、上を見るとどうしても不満が出がちです。
そして、ヨーロッパ方面の個人ビルダーもの等、本格的なものは基本的に30万円オーバーでかなりの覚悟が必要になります。(しかも必ずしも作りがいいとも限らない。でも音は良い傾向にあると思います)
それを踏まえて、僕なりに考えた入門にオススメするメーカーをご紹介します。
価格は大体目にする大まかな相場ですので、個体によって色々変動あります。ご参考までに。
・Aria MMシリーズ(基本中古狙い)・・・3〜6万円程、現行機種12万円〜
・Altamira・・・中古6〜13万円程、新品15万円〜
・Eastman・・・新品15万円〜
・Gitane・・・中古6〜13万円程
・Stringphonic(ぶっちゃけ一番オススメ)・・・中古9万円〜 新品16万円〜/30万円〜
国産であるStringphonic以外は全て中国製造になります。ちなみにAriaを製造しているのはAltamiraなので、両者の基本的な技術は同じだと思います(いわゆるOEM生産)
Altamiraは千葉のショップ''TANTAN''の技術指導が入ってからかなり改善されおり、当時僕は指導前のモデルを使用してましたが、それと比べて仕上がりも音も良くなってました。
Eastmanは元々ジャズギターが有名で塗装の質感の良さも評判でしたが、塗装についてはジプシーギターでもかなり雰囲気の良いものとなってます。
作りも良好でしたが、出音は特に他の同クラスと比べて秀でた感じでも無く、無難な感じでした。
Gitaneはひと昔前はコスパモデルとして結構なシェアがあったようですが、今は上述のような他メーカーの参入や技術向上で少し影を潜めてる印象です。
そしてオススメと書いたStringphonicの何が良いかと言うとまず国産(寺田楽器)なので全体の仕上がりがめちゃくちゃ良いです。
一番安いモデルの''Basic Model''で16万円からとなりますが、出音もこの価格帯ではかなり迫力があり、いわゆる「弦中心で鳴ってる感」が薄く、しっかり全体で鳴ってる印象です。
僕も実際に所有しており、これまでに上記のメーカーとも弾き比べましたが一番アコースティックな鳴りをしていると感じます。
アジア製造のものはどれも似たレベルで競っている感じがありますが、Stringphonicは中でも少し異質な仕上がりです。
「とりあえず10万円以下のものから」と言うのであれば中古でAriaやAltamira、Gitaneでも良いとは思いますが、もし10万円以上の中から検討するのであればStringphonicはオススメ出来ます。
あと、これは前情報ではありますが、今年のサウンドメッセ大阪のブースにてStringphonicがコストダウンモデルを2本程出展するそうです。
これは今まで一番安いモデルだった''Basic''よりも安く販売するモデルで、大体11万円程になる予定とのこと。
製造や品質管理は従来通りの基準で行われるので、グレードは落としつつもクオリティは維持できてるようですね。
正直、オーナーの竹本さんも販売の間口を広げるためのラインナップなので、これだけが売れたところでまともな利益は見込めない為、あまりやりたくは無いとは言ってましたが、値段は落としつつも自信を持って提案できるギターらしいので気になる方はチェックしてみて下さい。
(宣伝しといてと言われたのでこの場で宣伝します)
そういえば稀にノーブランドのようなメーカーのものが物凄く安く出回ったりもしてますが、やはり安かろう悪かろうな部分もあると思われますので、慎重になった方がいいです。
もしご質問等あればお気軽にコメント下さい。