注:自分語りです。
前回、ランディ・ローズについて書きました。
ランディからは音楽への姿勢を学びましたが、特にギタープレイや音楽の幅に影響を与えてくれたのがガスリー・ゴーヴァンでした。
Guthrie Govan(ガスリー・ゴーヴァン)
当時の僕は学生で、ギターはハードロック/メタル一筋というプレイスタイルでしたが、その恩恵で指はそれなりに速く動き、(あくまで)「表面上は結構弾けてる人」みたいな勘違いからくる謎の自信を持っていました。
ロックの範疇ですが、スケール知識やちょっとした理論面は独学でそこそこ頑張って身につけてもいました。(ランディの影響)
聴く音楽もロック中心で歌物が好きでしたが、歌と同じくらいギターが主張してくるバンドが好きだったので、テクニカルなギターへの興味が高まり、シュラプネル界隈の有名どころも押さえていました。
80年代のバンドは流行り的にギターテクニック重視なものが多いですが、やはりシュラプネルから登場する音源の方が一歩踏み込んだギターオタク感が強く、音楽よりもギターの可能性を追求してるアングラ感が好きでしたね。笑
こういった音楽は高校生の頃から好きで、大学に入ってもその延長で聴いてるという感じでした。
こう振り返ればガスリーを好きになる土台としては自然なものだった気がしますが、まだ当時はジャズやフュージョンは完全スルーで正直どうでもいい枠でした。笑(J-POPも一部を除きほぼ敵)
大学生になる直前まで短期間だけヤマハでレッスンを受けていた事があり、その時の先生がパット・メセニーやラリー・カールトン、チック・コリアといった定番のフュージョンCDを貸してくれたのですが、
その頃は良さが理解出来ず、特にメセニーに至っては名曲''Have you Heard''を聴いても「なんやこのフワフワしてよく分からん曲は・・・。ギターソロもチョロチョロしてるだけでつまらんし無駄になげえ・・・」みたいな印象だったと思います。
今考えるとトンデモないですが、やっぱり当時は歪んだロックギターと様式美サウンドが好きだったんですよね。
とはいえ浮遊感や緊張感あるアプローチに耳を惹かれる事はちょくちょくあり、それはロックでも例外ではなく、例えばランディだとライブ版の''Paranoid''のソロで一瞬入るアウト感(ランフレーズを同じ音形で半音ずつ上がるような感じだったと思います)や、当時ハマっていたゲイリー・ムーアにも類似のアプローチがあり、あの雰囲気になんとなく憧れがありました。
その後に知るアンディ・ティモンズ辺りはより顕著で、そうなるとジャズ的な発想も混じってはきますが、それでもやっぱり聴くのはロックでした。
要はロックな弾きまくりな中にたまに入るクロマチックや(人によっては偶然っぽくても)緊張感あるサウンドが好きだったんですよね。
スティーブ・ルカサーもそういう要素ありますよね。
そんなこんなでネットでガスリーの存在を知ります。
このFivesの映像の第一印象は自分にドンピシャで、
・これでもかというくらいのテクニック
・ロックインスト
・ストレートなペンタの中に混じる浮遊感
・謎のギタリスト感(重要)
こういった要素が高い次元で完成されており、シュラプネル的な雰囲気もありで一発でドハマリしました。笑
関連に出てくるジャムトラックに合わせてのデモのどれを見ても見事な内容で、「どうやったらこういうアプローチができるんだろう???」という疑問が生まれました。
そうなってからはまずはガスリー絡みの音源は必死で探し回り、聴き漁ってました。
丁度この時期はガスリーがYoutubeを通じて有名になり始めた頃だったと記憶しています。
元々エイジア等での活躍で海外では熱心なマニアの間で知られる存在ではありましたが、日本ではBluesjamtracks(現JTC)でのデモを中心に人気が出始めたのではないでしょうか。
またそれと同時期にガスリーに似たスタイルを持つ海外のテクニカル・フュージョンスタイルのギタリスト達が注目され始め、ネットを中心にちょっとしたブームが来たように思います。(今ではSNSにブームがシフトしてるようですね)
それでもまだガスリーはマニア向けの認知度でしたし、CDは輸入するしか入手手段がなかったので今はなきCornford Recordから取り寄せたり、ダウンロード音源に関してもジャムトラックサイトのデモ音源を片っ端から購入して、本人の教則本も揃えました。
そして知れば知るほどガスリーが沢山の著名なミュージシャンからネタを引っ張って来てるのだと知ることになります。
特に様々なギタリストのトレードマークとも言えるアイデアを吸収して自分の演奏にするスタイルや、単純にその探究心の強さやストイックさにも感銘を受けました。
ランディの時もですが、やっぱり自分は勉強熱心なプレイヤーが好きなんだと思います。
音楽観を変えられた、というのはこういう部分からですね。
当初はガスリーから多くを盗むつもりでやってましたが、それだとやっぱりネタが薄まるというか、情報がある程度ガスリー色に染まってるので、もっと大元からやる方がいいなと思い、聴く音楽の幅も広がりました。
あれだけ関心の無かったパット・メセニーも一転して楽しめるようになりましたし、それらを通じて他のジャズギタリストなんかを知ることが出来ました。
当時、僕はヤマハのレッスンを退会したのちに、とあるギタリストの方からレッスンを受けていましたが、その時によく言われてたのが「もっと色々な音楽を聴いた方がいい」でした。笑
その先生はベーシックな部分を大事にしている職人的なギタリストでしたので、僕がガスリーを知ってからは多少は幅が広がったとはいえ、どうしても知識が偏ってるように映ったのだと思います。というか実際そうでしたね。
今でも偏ってますが、特にあの頃はなんでも「とりあえずガスリーを通して知る」みたいなところがあったので・・・笑
正直今でもギターを前提に音楽聴いてる事は多いですね。根本的なところは変わってないと思います。
ガスリーから学べたのは、そういった色々なプレイヤーの吸収や応用の他に、ギター面では指板の捉え方も大きかったです。
古典的なハードロックから学んでいた僕はいわゆる「ボックスポジション」的な見方が主で、弾いてる音階をドレミや度数で意識する事もほぼありませんでした。
でも、ガスリーは運指がかなりワイドで、音の繋がりを意識して横に横に繋いでいくパターンが多く、ペンタの動きでも少しストレッチやスライドを加えつつ、更にはスケール外の経過音もうまく織り交ぜていくんですよね。
そういうポジショニングのセンスの良さはとても参考になったと思います。(ペンタの動きはショーン・レインが教則でやってたような捉え方でしたね)
あとはガスリーお得意のクロマチックパターン。これはかなり熱心に採譜と分析をやりました。
クロマチックは使うタイミング次第ではわざとらしくなり過ぎたり、「ただクロマチックで繋いだ」みたいになってしまいますが、ガスリーはこの辺りのバランスが凄く良いと思います。
なんというか楽曲への馴染ませ方が上手いですね。
とにかく色々なアイデアの寄せ集めのような存在のガスリーは参考のしがいがあり、そこから元ネタを辿る事で視野を広げる事が出来たと思います。
コテコテなフュージョンやジャズではなく、ロックスタイルのプレイヤーだったという取っ掛かりの良さも大きいですね。
この辺りからフュージョンスタイルのプレイへの興味が強まり、似た傾向のテクニカルプレイヤーを漁るようになりました。
かなり偏った振り幅で長年過ごしましたが、僕は好きな事にしか勢いを出せないタイプなのでこれは仕方なかったですね・・・笑
今でこそ引き算をする脳は成長しましたが、当時はギター主体に足し算しまくる思考でした。
良くも悪くもガスリーに音楽観を変えられた、というお話しでした。
俺以外にもガスリーに色々と狂わされたやつおるやろ!?
次回はBrett Garsedについて語りたいです。